平成21年6月16日
成田空港は、その建設の過程で激しい空港反対闘争が発生し、内陸空港の宿命である騒音問題とあいまって地域社会に大きな傷跡を残した。しかしながら、その後、シンポジウム、円卓会議が開催され、議論が積み重ねられた中から導き出された「共生」の理念を実現するひとつの方策として共生委員会が設置され、これまで空港からのマイナスの影響を軽減するための合意事項の実施状況の点検を通じて、地域と空港の相互の不信感の払拭に努めてきた。
この間、平行滑走路新設や北伸事業等が実現したのも、「共生」の理念に基づいて共生委員会等の場で空港側が空港の現状や将来計画等を住民に直接説明し、住民の意見や不安の声に真摯に耳を傾け可能な限りの改善策を講ずるなどの努力を重ねたところに負うところが大きい。これによって、住民と空港との間に信頼関係を形成してきたことは事実として認められていいだろう。
共生委員会は「合意事項」が一部を除き概ね実現されたことから14年間に及んだ活動にコンマを打ち、発展的に解消したが、将来にわたって「共生」の理念を継承していくことの必要性は今後も変わることはないと思われる。
こうした状況の中で、空港を地域の経済資源と位置づけ、その発展が地域の発展にもつながるとの観点から双方の発展を目指すべきだとする「共栄」という考え方が出て来た。
もとより地域の発展は自治体が中心となって行うべきもので、近年、「成田国際空港都市づくり推進会議」が発足したことは極めて注目される事象であり、その意義は大きい。空港のプラス面を最大限に引き出すことが、ひいては騒音等のマイナス面の軽減に寄与することを考えれば、共生・共栄会議でも「共栄」の実現に向け一定の役割を果たしていくことが期待される。
共生・共栄会議では第一に、空港側が様々な情報の開示を進め、住民の意見に真摯に耳を傾け可能な限りの措置を講ずる努力をするなど、住民との双方向の対話の実現を担保する場となることを目指すこととする。それによって今後、空港容量の更なる拡大などの新たな課題に直面することになっても、双方向の対話を通じて相対立する考えを止揚し、より強固な信頼関係に基づく「共生・共栄」という新たな高みに到達することが可能になると考えられる。
第二に、新たに生まれてきた共栄の理念について、住民の目線から意見を交換し、住民と空港側との共通の理解を深め、それを空港運営に活かすことが肝要であり、そうした活動を通じて「共栄」理念の普及にも取り組んでいくことが望まれる。その意味で、共生・共栄会議として、積極的に地域との交流会などを実施することとする。
この先、完全民営化や容量拡充などの見通しが概ねついた後、新たな法制度の実施状況や共生財団との関係なども視野に入れて新共生スキームについて検討することが不可欠である。したがって、共生・共栄会議はそれまでの間、暫定的に新共生スキームを担う立場に立つことになる。
住民と空港の間の双方向対話を重ね信頼関係を確固たるものとし、相互理解の上に容量拡大を含めた空港の将来像を模索していけば、成田空港は真に世界に誇れる空港になり、周辺地域も国際空港都市として大きく発展する道が開かれることになるだろう。