提言活動

2018/10/29地域振興連絡協議会会長(千葉県知事)宛の提言書を提出しました

地域振興連絡協議会
会長 森田 健作 殿


            成田空港周辺における防音工事に関する提言


                                    平成30年10月26日  
                                    成田空港地域共生・共栄会議
                                    会長 石田 東生    



1 緒言
 成田空港地域共生・共栄会議は、平成29年3月、成田空港の更なる機能強化の議論に合わせ、空港と周辺地域とが今後も「共生・共栄」を実現できるよう関係者に対して提言活動を行った。当会議では提言に謳った「空港周辺地域に暮らす住民の生活環境の維持・改善に向けた対策」、中でも今後生じうる騒音影響の増大に対する防音工事等の充実が地域から強く求められていると考えている。
 現在、成田空港の周辺地域においては、住民への航空機騒音による影響を軽減するため、「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」(以下「騒防法」という。)に基づき、騒防法第1種区域内において成田国際空港株式会社(以下「NAA」という。)による防音工事が行われている。
 また、法律を越えた成田空港独自の対策、いわゆる成田方式として、2本の滑走路の延長線上に挟まれた「谷間地域」において、自治体による騒防法第1種区域並みの防音工事が行われるとともに、騒防法第1種区域から一定程度外側のエリアであるいわゆる「隣接区域」においても成田空港周辺地域共生財団によって防音ガラスに交換する事業が実施されている。更には同財団による拡充工事(壁・天井の防音工事)、自治体による空調機にかかる電気代補助、固定資産に係る用益の制限及び維持管理費の一部を補うための固定資産税補助が行われる等、成田空港における航空機騒音対策は充実したものとなっている。
 しかしながら、実際に防音工事を受けた地域住民からは、「換気や防湿への配慮が不足している」、「農家型住宅を考慮した遮音の実効性の高い防音工事が施工されていない」、「防音工事にあたっては限度額が設定されており、十分な防音工事を行うことができない」といった不満の声があるのも事実である。
 成田空港地域共生・共栄会議では、過去にも防音工事に係る勉強会等を実施するなかで、委員からも「防音工事は、画一的・硬直的ではなく、それぞれの住宅の事情や住宅の仕様の変化に、より柔軟に対応すべき」といった意見が寄せられるなど、議論を重ねてきた。
 そうした折、本年3月13日、国、千葉県、空港周辺市町、NAAから成る四者協議会において成田空港の更なる機能強化の実施について確認され、成田空港の年間発着容量は50万回へと拡大することとなった。成田空港の成長が我が国の経済発展に寄与するものであることに疑いはないものの、周辺地域にとっては、これまで以上に航空機による騒音影響が増大することが想定されることから、地域住民の意見に寄り添った防音工事の施工方法の改善が必要であると考えている。
 今後、更なる機能強化に伴い必要となる防音工事については、先の四者協議会で取りまとめられた「成田空港の更なる機能強化に当たっての環境対策・地域共生策の基本的な考え方」に基づき進められていくこととなっているが、当会議としても、学識経験者、周辺地域の住民及び関係地元団体の代表、国、千葉県、空港周辺市町、NAAなどの多様なメンバーから構成される強みや、これまでに培われた相互信頼関係を活かすことにより、四者協議会とは違ったアプローチで関係者との連携を密に取りながら、実効性の高い防音工事に関する提言を行うこととする。
 なお、本提言は、多様な構成員から成る当会議において、異なる立場から示された様々な意見をもとにとりまとめたものであり、各構成員がそれぞれ代表する組織や団体の見解を表したものではないことを付言する。



2 提言
(1)住宅事情に適した防音工事の実施
 2003年の建築基準法改正により、住宅の高気密化が増し、新築にあたっては全ての居室(家全体)における24時間換気計画が義務化された。また、近年建築される住宅では「LDK」といった広い間取りの空間が増えている。
 防音工事では、騒音の侵入を防ぐため住宅を気密化する施工が施され、合わせて気密化に対応して空調機や換気扇も設置されるが、換気扇の設置については、個々の住宅事情にあった全体の換気計画のもとに設置されるのではなく、部屋の大きさに応じた換気扇の能力や台数が画一的に決められることから、防音工事の施工による結露や建築資材の損傷の発生が懸念される。また、空調機についても、「LDK」に対応するような大型機器の設置が想定されておらず、大型の機器を設置する場合には、費用の自己負担が発生する。
 以上のように、防音工事の施工については、画一的な対策で済ませるのではなく、住宅毎に気密性や換気計画を確認のうえ、それぞれの住宅事情に適した柔軟な防音工事を実施することや、時の流れに応じた住宅事情の変化へ対応することが必要である。


(2)防音工事済み住宅における「住まい方マニュアル」の作成
 先に述べたとおり、防音工事が施工されることによって住宅の気密性が高まることから、引き続き住宅を健全な状態に保ち快適な生活を送るためには、こうした住宅に対応した住まい方がある。
 例えば、高気密住宅で石油ストーブを燃焼させることは非常に危険なことから、「小さな部屋では石油ストーブではなくエアコンを使用してください」といったことや、「部屋は24時間換気してください(常時換気は止めないでください)」といった情報を発信することが重要である。
 ついては、防音工事関係者において防音工事済み住宅で快適に生活を送るための「住まい方マニュアル」を作成して、防音工事を実施した住民に配付することが必要である。


(3)内窓設置工事の推進
 成田空港の更なる機能強化については、3月13日に開催された四者協議会の確認書に基づき、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催までのA滑走路における発着時間の緩和に向けて関係者による準備が進められていることと思料する。
 成田空港の発着時間(6時から23時まで)については、1971年に当時の運輸大臣と千葉県知事との間で決定されたものであり、開港から40年を経た現在に至るまで遵守されてきた大変重い約束である。今般、その発着時間を延長することについて四者協議会で合意されたわけであるが、内陸空港である成田空港においては地域住民の生活環境に大きな影響を与える恐れがあることから、住民の安眠を確保するための対策として新たに寝室への内窓設置及び壁天井の補完工事を実施することが決定したところである。
 内窓設置工事については、10月1日からA滑走路側の騒特法防止地区内において先行的に開始されたところであるが、住民の安眠を確保する上で非常に重要な施策であることから、住民からの申請には迅速に対応するとともに、一軒でも多くの対象世帯が申請を行うよう広報活動にも努めるなど、関係者が協力して内窓設置工事を推進することが必要である。



3 むすびに
 成田空港と地域との関係は「共生」から「共栄」へと遷り変わってきたが、今後も「共生」がベースであることに変わりはなく、空港と地域とが共生するためには、地域住民が日々静穏な環境で生活できることが大前提である。
 冒頭でも述べたとおり、成田空港における航空機騒音対策はかなり充実したものとなっており、今般、当会議においても議論し、提案してきた防音工事における「ペアガラスの助成」や「浴室、洗面所、トイレの外郭防音化」といった取組みも実現したところである。
 一方、本提言にも触れたとおり、成田空港周辺には様々な住宅が建てられているにも関わらず、画一的な防音工事が行われており、全ての防音工事が、100%住民の満足したものとなっているとまでは言い難い。今後、航空機の低騒音化が益々進むと言われているものの、年間発着容量が30万回から50万回へと大幅に拡大することで、地域住民の生活環境への負担が増すことが予想される。
 貴職におかれては、地域との「共生・共栄」の理念に基づいた課題解決に向け、更なるご協力をお願いしたい。



                                             以 上

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