地域振興連絡協議会
会長 森田 健作 殿
成田空港周辺における道路交通課題に関する提言
平成30年7月20日
成田空港地域共生・共栄会議
会長 石田 東生
1 緒言
成田空港地域共生・共栄会議は、平成29年3月、成田空港の更なる機能強化の議論に合わせ、空港と周辺地域とが今後も「共生・共栄」を実現できるよう関係者に対して提言活動を行った。当会議では提言に謳った「空港と周辺地域の発展を図るための道路交通の改善」、中でも「地域の生活道路との調和」について、特に地域にとって大きな問題と捉え、約1年間にわたり議論を行うと共に専門家集団(日本大学理工学部交通システム工学科)の支援・協力を得ながら課題の洗い出しを行った。そのような一連の活動を通じて、空港周辺では、集中する交通による渋滞の慢性化や交通量の増大と施設管理の不備により安全性の欠如といった課題が生じているという事実が見えてきたところである。
そうした折、本年3月13日、国、千葉県、空港周辺市町、成田国際空港株式会社(以下「NAA」という。)から成る四者協議会において成田空港の更なる機能強化の実施について確認され、成田空港の年間発着容量は50万回へと拡大することとなった。成田空港の成長が我が国の経済発展に寄与するものであることに疑いはないものの、周辺地域にとっては、道路交通課題をはじめとした新たな課題が生じるおそれもある。今後の成田空港の成長を交流人口や定住人口の増加といった周辺地域の成長に繋げていくためには、現在抱えている課題を1つずつ着実にクリアしていくことが求められる。
成田空港周辺の道路交通課題については、空港が立地するというその特殊性から、一体的に解決策や緩和策を策定・実行することが重要である。今後、更なる機能強化に伴い必要となる道路網の検討や整備については、先の四者協議会で取りまとめられた「成田空港周辺の地域づくりに関する基本プラン」にあるとおり、四者で連携協力しながら、実現に向けて取り組んでいるところである。一方、当会議としても、学識経験者、周辺地域の住民及び関係地元団体の代表、国、千葉県、空港周辺市町、NAAなどの多様なメンバーから構成される強みや、これまでに培われた相互信頼関係を活かすことにより、四者協議会とは違ったアプローチで関係者との連携を密に取りながら、実効性の高い実施可能な道路交通課題に関する提言を行うこととする。
なお、本提言は、多様な構成員から成る当会議において、異なる立場から示された様々な意見をもとにとりまとめたものであり、各構成員がそれぞれ代表する組織や団体の見解を表したものではないことを付言する。
2 活動
(1)試験的なシステムの構築および情報収集
成田空港圏の道路交通課題を把握するため、日本大学理工学部交通システム工学科の教員との連携により試験的なシステム「成田空港地域交通課題調査」(ホームページ)を構築すると共に、質問紙によるアンケートを実施し、本年1月18日から3月31日にかけて広く一般から道路交通課題に関する意見を募り、77件の意見が寄せられた。
(2)指摘のあった道路交通課題
最も多く寄せられた指摘は「渋滞」に関するもの(27件、全体の35%)であり、そのうち右折レーンがないことや、右折レーンがあっても処理能力が不十分なことによって渋滞が発生しているとの指摘が15件を占めた。
2番目に多く寄せられた指摘は「抜け道として利用される生活道路の幅員の狭さ」に関するもの(10件)であった。歩道の未整備に関する指摘(5件)と併せ、通学路の危険性を危ぶむ声が確認された。
3番目に多く寄せられた指摘は「路面標示が消えていること」に関するもの(6件)であり、「交差点での見通しの悪さ」(5件)や「踏切構造の悪さ」(4件)がそれに続いた。
また、「路面や歩道の補修」、「フェンスの補修」、「雑草の刈取りの必要性」といった改善策が寄せられると共に、「道路や車線の増設」や「交差点の改良」など抜本的な対策を必要とする指摘も寄せられた。
3 提言
(1)渋滞緩和改善の検討
今回の調査で最も多く寄せられた指摘は「渋滞」に関するものであったが、渋滞を解消するためには道路構造の改良等、抜本的な対策が求められるところである。課題解決にあたっては相当の時間と費用を要することから、一朝一夕に解決できるものではないが、成田空港の更なる機能強化の実施により、その状況の悪化が懸念される。
特に今回の調査で指摘のあったいくつかの交差点については、以前より地域住民から渋滞緩和の改善が強く求められていることから、当該交差点における渋滞の状況や原因を探り、地域住民や専門家の意見に耳を傾けながら、その改善策を検討することが必要である。
(2)道路の維持補修
今回の調査では路面標示(区画線や横断歩道)が消失していることへの指摘をはじめ、歩道の陥没等、路面状態が悪いという指摘が多く寄せられている。空港周辺の幹線道路のみならず地域住民が日常的に使用する生活道路においても、交通量の多さから路面標示が消えかかっている等、補修が必要な箇所が散見される。歩行者や車両の安全を確保するためには、適正なマーキング及び歩道や路面等の補修が必要不可欠であることから、優先順位付けをして早急に対応する必要がある。
(3)道路交通課題解決プラットフォームの構築
先に述べたとおり、成田空港の更なる機能強化の実施により、新たな道路 交通課題が生じるおそれがある。また、今後の成田空港地域の均衡ある発展のためにも地域の交通構想や課題について意見交換し、課題を共有するとともに、解決に向けて協働するプラットフォームが重要である。
これらの道路交通課題に対しては、地域の生活道路との調和や空港周辺地域間の連絡にも十分配慮して、検討をしていく必要があることから、地域住民、専門家、行政をはじめとする関係機関が問題意識を共有し、解決に向けて協働していくことが必要である。
4 むすびに
平成29年3月27日付け提言にもあるとおり、当会議としては、成田空港と都心を結ぶ幹線道路網の整備と共に、成田空港周辺地域の道路の役割として、地域の生活道路としての側面も、空港との「共栄」を目指す観点から重要と捉えている。
更なる機能強化に伴う空港敷地範囲の拡大により、既存道路の大幅な付け 替えや、増加する空港従業員、周辺に立地する企業にも配慮し、整備を進める 必要があるが、その検討の前段として、まずは、現在生じている問題の把握と、その対応が重要であると考え、今回、課題の洗い出しを行ったところである。
貴職におかれては、地域との「共生・共栄」の理念に基づいた課題解決に向け、更なる協力をお願いしたい。
以 上
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